Nのために : 湊かなえ : 立体パズルのような本。

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今、読む本が欲しい……

読みやすくそれでいて内容の濃い、明日に支障のでないような爽快感がある、日曜日の夕方にぴったりな本。
そんな思いを抱きながら駅の本屋さんにふらり。

我ながらおかしなことだと思うのだけれど、図書館や古本好きなわたしにとって『購入する本』とは、少し特ちょっとした思入れがあるというか、ある手順を踏むことが多いのです。

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でもこの『Nのために』は違いました。
ただ手にとり冒頭を読み、購入を決めました。

 

Nのために (双葉文庫) 
湊 かなえ

 

始めの数行がただただ面白くて、惹きつけられてしまいました。

簡潔に伝わる、起りそうな非日常。それをダイレクトに伝達してくる巧みな一人称の文章。魅力を感じるのは数行で充分です。

 

◆やっぱり、あの『告白』の湊かなえさん。

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リズミカルな場面展開、内容は全く違っても、この面白さどこかで……なんて思ってしまいます。
これほどアイデンティティのある文章をかけるって本当にステキですし、単純にうらやましい。絶対感想ブログ書こうと思いました。(笑)

夢中で読み進め、最後まで駆け抜けるようでした。

どのぐらいかというと、タイトルや表紙を見たのは読み泡った後。あとがきを読みつつでした。

(でもこのストーリーは、ちゃんとタイトルを見るべきでしたね。)

それほどまでにリズミカルな文章。
一時も目を離せないようなミュージカル。
そんな印象のお話でした。

 

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これって先にも言いましたが、湊かなえさんのアイデンティティというか持ち味だと思います。きっとわたしも湊かなえさんの著書だと知っていたり、彼女の本が読みたいと思っていたら求めてしまう要素だったかと思います。

 

きっとわたしは読みやすい本を知りたいと言われれば、彼女の名前をエントリーさせると思います。

 ただ、そんな中でもわたしは『Nのために』がとても好きです。

初めての記事なのでいくらか作者さんに話がそれてしまいましたが。(笑)

 

◆その好きだと迷わずいえる理由。

代表作である『告白』を比較対象としましょう。

 

 『告白』を読んだ時、わたしはエネルギーの強さを非常に感じました。

特に登場人物は芯があります。若さゆえの無敵感や過去ゆえの信念といったものが、大きなパワーとして表れていたと思います。

そのため、どの登場人物が一人称となり物語を語る場面でも腕力を感じていました。

各々が正しいと思ったことを遂行する、パワーとパワーがぶつかることで劇的なゆがみが広まる……、
そんな物語を持ち前のスピード感で昇華しているように思えました。

 

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反してこの『Nのために』は人間のはうような執着、固定概念が露骨に表れていたと思います。
抜け殻であるがゆえの失速感、登場人物たちが人間臭いがゆえの黒いものが表現されているように感じました。

登場人物たちは皆誰か――Nのために動き、Nを中心として動き、Nに染まり、あの時からNをさけて生きている。
一人称で語る思いは確実に本人のものなのだけれど、その思いは常に他に向いている。

 

誰もが主人公だと主張する『告白』と

誰もが他者を主役におく『Nのために』。

作り方は湊かなえさんへの期待を裏切らないものだけれど、
テーマが相反するといってもいい――そんな風に感じました。

 

解説にて千街晶之さんが、著者のこの本に対するインタビューを載せていました。

なんでも、立体パズルを作りたいと思ったのだそうです。
――登場人物たちは、最後まで誰が嘘をついているか分からない。人の気持ちの奥底を追及するというよりは、読む人だけが立体パズルを組み立てることができて、最後には、そうかこんな形式だったのかと分かる小説を――
そんな風にこたえているようです。

 

これがすべてを読み終わったあと、すとんと胸に落ちました。

とてもスリリングで、無視できない盛り上がり。
でもなぜか疾走感や駆り立てられる感覚はなかったのです。

それはある種のミュージカルや立体パズルのような、
計算された構築的な美しさのせいかと思いました。

 

おそらくそれがなければ人間くささが後味悪く残ってしまったのではないでしょうか。

その絶妙なバランス感。
湊かなえさんの本を、もっともっと読みたいです。

 

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★このあいだ、白ゆき姫殺人事件をDVDで見ました!

その話もまたすぐに。

 

 

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