湊かなえさんの「Nのために」を読みました。
読みやすいのに内容が濃い、すごく面白い一冊!
ミステリーって人間不信になるようなギトギトのものもあるけど(その憂鬱さが面白かったりする)、「Nのために」は本格ミステリーなのに爽快感があって後味の良いお話でした。
決定的なネタバレはできるだけしないように、書評を書いておきます。
湊かなえさんの「Nのために」ってどんな本?
超高層マンション「スカイローズガーデン」の一室で、そこに住む野口夫妻の変死体が発見された。現場に居合わせたのは、20代の4人の男女。それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。なぜ夫妻は死んだのか? それぞれが想いを寄せるNとは誰なのか? 切なさに満ちた、著者初の純愛ミステリー。
あんまり恋愛ものは読まないのですが、あの「告白」の湊かなえさんの作品だしってことで手に取ってみたのです。
パラパラと読んでみると、始めの数行からすぐに惹きつけられてしまいました。
「Nのために」の面白いポイント
「Nのために」のどんなところが面白かったのか、もう少しまとめていきます!
1.「日常」というミステリーファンにたまらない題材
まず題材がいい! 日常に潜む謎や思惑っていいよね!
簡潔で想像しやすい日常。なのに、なんとなくある違和感が物語をすすめていく……という、もうミステリー好きにはたまらない内容です。
2.人間臭さが生々しくていい
「Nのために」はNのイニシャルをもつ人物達がでてくるのですが、それぞれのキャラが人間くさくていいんですよ。
登場人物たちは皆、ほかのNのために動き、Nを中心として動き、Nに染まって生きています。その中ででてくる人間の執着心や固定概念みたいなものが、すごく表現されていました。
しかも、湊かなえさんはそれは一人称で語ってくれるのよ!
だからこそ、それぞれの人物に感情移入しちゃってもうラストは涙なしには見れませんでした。(一人称のミステリーっていいですよね!)
3.立体パズルのような多面的なストーリー構成
小説にはあとがき等があるものですが、「Nのために」は解説として千街晶之さんの著者インタビューが記載されていました。
そこで彼女は
登場人物たちは、最後まで誰が嘘をついているか分からない。人の気持ちの奥底を追及するというよりは、読む人だけが立体パズルを組み立てることができて、最後には、そうかこんな形式だったのかと分かる小説を書きたかった。
と答えていました。
立体パズルのような小説……!まさに……!
どの章にフォーカスするか、どのキャラクターを軸に考えるかで見え方が変わるという、多面的なストーリー構成なんですよね。
おそらく、その巧みさがなければ人間臭い感じが後味悪く思う人もいたんじゃないかと思う。(それくらいミステリーとしての内容も濃いので)
とにもかくにも、絶妙なバランス感だと思いました!
湊かなえさんの文章ってなんであんなに面白いんだろう
1冊読んでみて思ったんですが、湊かなえさんの文章ってなんであんなに面白いんでしょうね?!
リズミカルな場面展開。内容は全く違っても、この面白さどこかで……なんて思ってしまいます。
(題材はどれも違うけど、他作品もそういう湊かなえさんっぽさある気がする)
これほどアイデンティティのある文章をかけるって本当に素敵だなと思います。単純にうらやましい。
「Nのために」夢中で読み進め、あっという間に最後まで到達してしまいました。
まるでミュージカルみたいで、一時も目を離せないようでした。
読みやすいものやテンポの良いミステリーを読みたい方には、とくにおすすめです!
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